年末調整の時期になると、「従業員からどの書類を集めればよいのか」「給与計算担当者は何を確認すればよいのか」と迷うことがあります。令和8年分は基礎控除や給与所得控除などの見直しもあるため、前年と同じ感覚で処理しないことが重要です。
この記事でわかること
- 年末調整で従業員から集める主な必要書類:扶養控除等申告書や各種控除申告書などを確認します。
- 各種申告書・証明書の確認ポイント:扶養親族や保険料、住宅ローン控除など、従業員ごとに必要な書類を整理します。
- 給与計算担当者が年末調整で注意したい実務:対象者・申告内容・証明書などを段階的に確認します。
令和8年分の年末調整に必要な書類は4種類が基本

年末調整では、従業員の状況に応じて複数の申告書や証明書を集めます。令和8年分では、主に「扶養控除等申告書」「基礎控除申告書等」「保険料控除申告書」「住宅借入金等特別控除申告書」の4種類を確認します。
特に重要なのが、すべての従業員に同じ書類を提出してもらうわけではない点です。扶養親族の有無、生命保険料の支払い、住宅ローン控除の適用状況などによって必要書類が変わります。
また、年末調整の対象者は原則として「給与所得者の扶養控除等申告書」を提出している一定の従業員です。給与収入が2,000万円を超える人など、年末調整の対象外となるケースもあります。
そのため、まず対象者を確認し、そのうえで必要な書類を個別に整理すると、給与計算担当者の確認漏れを防ぎやすくなります。
年末調整は書類を集めるだけでなく、従業員ごとに必要書類を判別することが重要です。
(参考)国税庁「各種申告書・記載例(扶養控除等申告書など)」
扶養控除等申告書は1年分の家族情報を確認する重要書類

「給与所得者の扶養控除等申告書」は、扶養控除などの適用を確認するための基本的な書類です。給与所得者は、その年の最初の給与の支払いを受ける日の前日までに提出することとされています。
年末調整では、提出済みの内容から変更がないかを確認することが重要です。結婚、離婚、出生、扶養親族の就職などがあった場合には、扶養親族の状況や所得見込みなどが変わっている可能性があります。
また、令和8年分は扶養親族等の所得要件が改正されています。前年の基準をそのまま使うのではなく、令和8年分の様式・記載例を確認しながら処理することが大切です。
給与計算担当者は、単に「提出されているか」だけでなく、氏名・住所・扶養親族などに変更がないかも確認しましょう。
令和8年分は扶養親族の所得要件にも注意
令和8年分では扶養親族等の所得要件が見直されています。従業員から申告された家族の収入状況を確認し、控除の適用要件を満たしているか確認することが必要です。
前年の年末調整データをそのまま使用するのではなく、令和8年分の制度に合わせて確認することがポイントです。
基礎控除・配偶者控除などの申告書は4つの控除をまとめて確認

令和8年分では、「給与所得者の基礎控除申告書」「給与所得者の配偶者控除等申告書」「給与所得者の特定親族特別控除申告書」「所得金額調整控除申告書」が一体となった様式を使用します。
この書類では、本人の所得見込みや配偶者の所得見込み、特定親族に関する情報などを確認します。そのため、給与計算担当者は申告書の記載内容だけで判断せず、必要に応じて従業員へ確認することが大切です。
令和8年分は基礎控除の引上げ、給与所得控除の最低保障額の引上げ、扶養親族等の所得要件の改正などが行われています。
前年の年末調整データをそのままコピーするのではなく、令和8年分の制度に合わせて確認することがポイントです。
令和8年分は前年との違いをチェック
令和8年分では複数の所得控除に関係する見直しがあります。給与計算ソフトや年末調整システムを利用している場合も、設定や申告書の様式が令和8年分に対応しているか確認しましょう。
(参考)国税庁「令和8年分年末調整のしかた(手順などの説明)」
保険料控除申告書は4種類の保険料・掛金を確認

生命保険料や地震保険料、社会保険料などの控除を受ける従業員からは、「給与所得者の保険料控除申告書」を提出してもらいます。令和8年分についても国税庁が専用の申告書と記載例を公開しています。
確認する際は、申告された保険料や掛金の種類だけでなく、控除証明書などの必要書類が揃っているかもチェックします。たとえば、国民年金保険料等について社会保険料控除を受ける場合は、支払金額を証する書類の提出が必要です。
一方、給与から天引きされている社会保険料については、同じように証明書を提出してもらう必要はありません。どの保険料を本人が直接支払ったのかを整理して確認すると、二重計上などのミスを防げます。
電子データで控除証明書を受け取るケースもあるため、紙だけを前提にせず、会社の年末調整の運用に合わせて管理しましょう。
控除証明書は紙だけとは限らない
生命保険料控除証明書や地震保険料控除証明書などは、電子的に交付される場合もあります。年末調整の電子化を進める場合は、従業員から受け取った電子データを適切に確認・管理できる体制を整えることが重要です。
住宅ローン控除は2年目以降なら年末調整で必要書類を確認

住宅ローン控除を年末調整で受ける従業員からは、「住宅借入金等特別控除申告書」など、必要な書類を提出してもらいます。住宅ローン控除は、原則として最初の年は確定申告が必要ですが、2年目以降は年末調整で適用できます。
給与計算担当者は、住宅ローン控除申告書の提出状況だけでなく、従業員本人が引き続き居住しているか、所得要件を満たしているかなども確認します。連帯債務や借換えがある場合は、控除額の計算にも注意が必要です。
また、住宅ローンの年末残高等については、金融機関や手続方法によって確認方法が異なります。調書方式では、金融機関から税務当局に提出された情報をもとに年末残高情報が提供される仕組みがあります。
住宅ローン控除の初年度は年末調整だけでは完結しない
住宅ローン控除を初めて受ける年は、原則として確定申告が必要です。年末調整の対象となるのは2年目以降なので、従業員から「住宅ローン控除を受けたい」と申告された場合は、適用年数を確認しましょう。
前職の源泉徴収票は年内の給与を確認

年の途中で入社した従業員については、前職の給与を含めて年末調整を行うケースがあります。その場合、前職の給与額や源泉徴収税額などを確認するため、前職の「給与所得の源泉徴収票」を提出してもらいます。
たとえば、令和8年4月に入社した従業員が1月から3月まで別の会社で給与を受け取っていた場合、その前職分を含めて年末調整することがあります。
国税庁は、前職の給与などを源泉徴収票によって確認できない場合には、年末調整を行うことができないとしています。
そのため、年末調整の案内時には「年の途中で入社した人は前職の源泉徴収票が必要になる場合がある」と明確に伝えておくと、書類回収の遅れを防ぎやすくなります。
年末調整の必要書類を3段階でチェックして給与計算のミスを防ぐ

年末調整では、書類を集めるだけでなく、「対象者」「記載内容」「添付・提出資料」の3段階で確認すると、給与計算のミスを減らしやすくなります。
- 対象者を確認:年末調整の対象者か、途中入社で前職給与があるか、住宅ローン控除など特別な控除があるかを確認します。
- 申告内容を確認:扶養親族、配偶者、本人の所得見込み、保険料などについて、申告内容に不自然な点や前年からの変更がないか確認します。
- 証明書などを確認:保険料控除などで証明書が必要なケースでは、必要な資料が揃っているかを確認します。
また、年末調整後に申告書の提出漏れが判明した場合でも、一定の期限までは年末調整を再計算できる場合があります。令和8年分の国税庁Q&Aでは、源泉徴収票を交付する時までであれば、一定の申告書について提出を受けて再計算できるとされています。
年末調整をスムーズに進めるには、提出期限を設定し、未提出者を一覧で管理するなど、給与計算と一体になったチェック体制を作ることが重要です。
給与計算と年末調整を別々に管理せず、提出状況まで一元管理すると確認漏れを防ぎやすくなります。
年末調整の書類回収は早めに期限を設定する
年末調整は給与計算と連動するため、書類の回収が遅れるほど最終給与の計算や確認にも影響します。従業員への案内時点で提出期限を明確にし、未提出・記載不備・証明書不足を分けて管理すると効率的です。
年末調整の書類確認をスムーズに進めるためのポイント

年末調整では、従業員ごとに必要な書類が異なるため、担当者の経験だけに頼ると確認漏れが発生する可能性があります。特に令和8年分は、基礎控除や給与所得控除、扶養親族等の所得要件などに見直しがあるため、最新の様式・制度を確認することが重要です。
給与計算と年末調整を効率化するには、提出書類をチェックリスト化し、従業員ごとに「提出済み」「確認中」「不足あり」を管理する方法があります。また、クラウド型の給与計算・年末調整システムを活用すれば、申告情報の収集や確認を効率化できる場合があります。
年末調整の書類回収や給与計算に毎年多くの時間がかかる場合は、業務フローそのものを見直すことも選択肢です。自社だけでの対応が難しいと感じた段階で、税理士や給与計算の専門家に相談すると、書類回収から計算までの体制を整理しやすくなります。
よくある質問

年末調整では全従業員から同じ書類を集めますか?
いいえ。扶養親族の有無、保険料控除、住宅ローン控除などの状況によって必要な書類は異なります。まず年末調整の対象者を確認し、その後に従業員ごとに必要書類を整理することが大切です。
年の途中で入社した従業員には何を提出してもらいますか?
前職の給与を含めて年末調整を行う場合は、前職の給与所得の源泉徴収票を提出してもらいます。前職分の給与や源泉徴収税額を確認できない場合は、年末調整を行えないケースがあります。
住宅ローン控除は初年度から年末調整できますか?
原則として、住宅ローン控除を初めて受ける年は確定申告が必要です。年末調整で適用できるのは原則として2年目以降なので、従業員から申告があった場合は適用年数を確認しましょう。
控除証明書は紙で提出してもらう必要がありますか?
控除証明書には電子的に交付されるものもあります。紙だけを前提とせず、会社の年末調整の運用に合わせて電子データを適切に確認・管理できる体制を整えることが重要です。
まとめ

令和8年分の年末調整では、従業員ごとに必要な書類を整理し、前年からの変更点も確認することが重要です。
- 必要書類を従業員ごとに確認:扶養親族、保険料、住宅ローン控除などの状況に応じて提出書類を整理します。
- 令和8年分の制度変更を確認:基礎控除や給与所得控除、扶養親族等の所得要件など、前年との違いを確認します。
- 提出状況まで一元管理:対象者・申告内容・証明書の3段階でチェックし、未提出や不備を早めに把握します。
年末調整をスムーズに進めるためにも、早めに必要書類と提出期限を整理し、給与計算と一体となった確認体制を整えておきましょう。
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