従業員が月の途中で退職すると「給与は何日分支払うのか」「社会保険料は控除するのか」「住民税の残額はどうするのか」など、給与計算で確認すべき事項が一気に増えます。
この記事では、月途中退職時の給与計算について、日割り給与の考え方から社会保険料、住民税、源泉所得税まで、実務上のポイントを整理します。
月途中退職の給与計算で最初に確認したい3つのポイント
月途中退職の給与計算では、最初に「退職日」「給与の締め日」「賃金規程」の3点を確認します。
特に重要なのが退職日です。例えば3月15日退職であれば、原則として3月16日以降は在籍していないため、3月分の給与は実際に勤務した期間を基準として計算します。
ただし、月給制の従業員について、月途中の退職時にどのような方法で給与を日割りするかは、会社の就業規則や賃金規程によって異なります。厚生労働省のモデル就業規則でも、計算期間途中の退職者について、所定労働日数を基準に日割りする例が示されています。
給与計算前に確認する3項目
- 退職日:最終在籍日を確認
- 締め日:給与計算期間を確認
- 賃金規程:日割り計算の方法を確認
会社独自のルールがある場合は、そのルールに従って一貫して計算することが重要です。
月途中退職では、給与の日割り方法を自己判断せず、就業規則・賃金規程に定めた計算方法を確認することが基本です。
月途中退職の日割り給与は「3つの計算方法」に注意
月途中退職の日割り給与は、会社の賃金規程に定めた方法で計算します。
代表的な方法として、暦日数を基準とする方法、所定労働日数を基準とする方法、月平均の所定労働日数を基準とする方法などがあります。
例えば月給30万円、所定労働日数20日、退職日までに10日勤務したケースで、所定労働日数を基準とする規程であれば、
30万円 ÷ 20日 × 10日 = 15万円
という計算になります。
一方、暦日数を基準とする規程であれば、月の日数などを基礎として計算するため、同じ退職日でも支給額が変わります。
日割り計算は会社のルールを統一する
重要なのは、退職者ごとに都合のよい計算方法を選ばないことです。
日割り計算の基準が就業規則や賃金規程に定められている場合は、その規定に沿って計算します。規程が曖昧な場合は、今後の採用・退職に備えて計算ルールを明確にしておくと、給与計算のミスや従業員とのトラブルを防ぎやすくなります。
社会保険料は退職日で変わる!「翌日」が資格喪失日
月途中退職の給与計算で特に注意したいのが、健康保険と厚生年金保険の社会保険料です。
社会保険では、退職日の翌日が資格喪失日になります。例えば3月15日付で退職した場合、資格喪失日は3月16日です。日本年金機構によると、社会保険料は資格を取得した月から、資格喪失日の属する月の前月まで発生します。
そのため、月途中の3月15日退職なら、原則として3月分の健康保険・厚生年金保険料は発生しません。
一方、3月31日付退職の場合、資格喪失日は4月1日となるため、3月分の社会保険料が発生します。
3月の退職日で比較するとわかりやすい
| 退職日 | 資格喪失日 | 退職月の社会保険料 |
|---|---|---|
| 3月15日 | 3月16日 | 原則なし |
| 3月30日 | 3月31日 | 原則なし |
| 3月31日 | 4月1日 | 3月分が発生 |
なお、退職時の給与から前月分の社会保険料を控除するケースもあります。日本年金機構も、月途中退職の場合は退職月の前月分を退職月給与から控除でき、月末退職の場合は前月分と退職月分の2か月分を退職月給与から控除できると案内しています。
社会保険料は「退職した月」だけで判断せず、退職日の翌日である資格喪失日を基準に確認することが重要です。
(参考)日本年金機構「従業員が退職・死亡したとき(健康保険・厚生年金保険の資格喪失)の手続き」

住民税は退職月によって3つの処理に分かれる
住民税は所得税のように給与額から会社が毎月計算するものではありません。市区町村から通知された特別徴収税額を給与から控除して納付します。
月途中退職の場合は、退職後に残る住民税をどのように納めるかを確認する必要があります。
6月から12月に退職する場合
6月1日から12月31日までに退職した場合、残りの住民税は原則として普通徴収へ切り替えます。
ただし、本人から申し出があれば、退職時の給与や退職手当等から残額を一括徴収できます。
1月から4月に退職する場合
翌年1月1日から4月30日までに退職する場合は、5月31日までに支払われる給与や退職金等が残りの住民税額を超えるなど一定の条件を満たす場合、本人の申し出がなくても一括徴収が必要になります。
5月に退職する場合
5月退職の場合は、通常、5月分を最後に特別徴収を行います。
このように、退職日が「1月1日〜4月30日」「5月」「6月1日〜12月31日」のどこに該当するかで処理が変わるため、給与計算時に必ず確認しましょう。

源泉所得税は「3つ」の控除項目と分けて確認する
退職者の給与では、社会保険料や住民税だけでなく、所得税の源泉徴収も必要です。
通常の給与については、給与の支給方法や「給与所得者の扶養控除等申告書」の提出状況などに応じて、国税庁の源泉徴収税額表を使用して税額を計算します。
ここで注意したいのが、退職後に最後の給与を支払うケースです。
例えば、3月15日に退職した従業員について3月分の給与を4月25日に支払う場合、その給与は退職後に支給されます。国税庁は、退職後に支給期が到来する給与であっても、在職中の給与と同じ性質のものなら退職所得ではなく給与所得として扱うとしています。
退職金と最後の給与は区別する
退職に伴って支払う一時金が、退職したことを原因として支払われる「退職手当等」に該当する場合は、通常の給与とは異なる方法で源泉徴収します。
したがって、給与計算では「最後の給与」「未払い給与」「退職金」を区別し、それぞれ適切な税務処理を行う必要があります。

月途中退職の給与計算を5ステップで確認する
月途中退職の給与計算では、次の5ステップで確認すると漏れを防ぎやすくなります。
STEP1:退職日を確認
退職届や退職辞令などで、正式な退職日を確認します。
STEP2:日割り計算の方法を確認
就業規則・賃金規程を確認し、暦日・所定労働日数など、会社が採用している方法で給与を計算します。
STEP3:社会保険料を確認
退職日の翌日が資格喪失日となるため、退職日が月末か、それ以前かを確認します。資格喪失届は、事実発生から5日以内に提出する必要があります。
STEP4:住民税の残額を確認
退職月に応じて、普通徴収への切り替えや一括徴収の要否を確認します。
STEP5:源泉所得税などを確認
最後の給与について源泉徴収税額を計算し、給与明細を作成します。源泉徴収した所得税等は、原則として給与を実際に支払った月の翌月10日までに納付します。
この5段階をチェックリスト化しておくと、退職者が出るたびに担当者がゼロから判断する必要がなくなります。
(参考)日本年金機構「従業員が退職・死亡したとき(健康保険・厚生年金保険の資格喪失)の手続き」

月途中退職が増えたら給与計算代行を検討する3つのタイミング
退職者が出るたびに、日割り給与、社会保険料、住民税、源泉所得税などを確認する必要があります。従業員数が増えるほど、通常の月次給与計算に加えて退職者対応の負担も増えていきます。
特に次のような場合は、給与計算代行の活用を検討する価値があります。
- 給与計算担当者が1人しかいない:担当者に業務が集中している
- 退職・入社が毎月のように発生する:イレギュラーな処理が増えている
- 社会保険や住民税の処理に時間がかかる:給与計算以外の確認作業に負担がかかっている
- 給与計算のチェック体制を整えたい:担当者以外による確認体制を整えたい
- 担当者の退職・休職時にも給与計算を止めたくない:業務の属人化を防ぎたい
給与計算代行では、毎月の給与計算だけでなく、源泉所得税や社会保険料などの控除計算、給与明細の作成などを外部に依頼できる場合があります。
月途中退職のようにイレギュラーな処理が発生する場面ほど、あらかじめルールとチェック体制を整えておくことが重要です。
給与計算は毎月の定型業務に見えて、退職・入社が発生すると処理が複雑になります。担当者だけに判断を集中させない体制づくりが重要です。
よくある質問
Q. 月途中で退職した場合、給与は日割り計算しますか?
A. 月途中退職時の日割り計算方法は、会社の就業規則や賃金規程に定められた方法によって異なります。暦日数や所定労働日数など、会社が採用している方法を確認して計算します。
Q. 月途中退職の場合、退職月の社会保険料は発生しますか?
A. 原則として、月途中の退職であれば退職月の社会保険料は発生しません。退職日の翌日が資格喪失日となり、資格喪失日の属する月の前月までが保険料の対象となるためです。ただし、月末退職の場合は退職月分の社会保険料が発生します。
Q. 退職時の住民税はどう処理しますか?
A. 退職月によって処理が異なります。6月1日から12月31日までの退職では原則として普通徴収へ切り替えますが、本人の申し出によって一括徴収できる場合があります。1月1日から4月30日までの退職では、一定の条件のもとで一括徴収が必要です。5月退職の場合は通常、5月分を最後に特別徴収します。
Q. 退職後に支払う最後の給与は退職所得になりますか?
A. 退職後に支給期が到来する給与であっても、在職中の給与と同じ性質のものであれば、退職所得ではなく給与所得として扱います。一方、退職したことを原因として支払う退職手当等は、通常の給与とは異なる方法で源泉徴収します。
Q. 月途中退職の給与計算で最初に確認すべきことは何ですか?
A. まず退職日、給与の締め日、就業規則・賃金規程を確認します。そのうえで日割り給与、社会保険料、住民税、源泉所得税などを順番に確認すると、処理漏れを防ぎやすくなります。
まとめ
月途中退職の給与計算では、退職日や賃金規程を起点に、給与・社会保険料・住民税・源泉所得税をそれぞれ確認することが重要です。
- 日割り給与:就業規則・賃金規程に定めた方法で計算する
- 社会保険料:退職日の翌日である資格喪失日を基準に確認する
- 住民税・源泉所得税:退職時期や最後の給与の支給状況に応じて適切に処理する
退職者が増えて処理が複雑になってきた場合は、給与計算のルールやチェック体制を見直し、必要に応じて給与計算代行の活用も検討しましょう。
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