2024年1月から電子取引データの保存が原則義務となり、「メールでもらった請求書をどう保存する?」「PDFを紙で保管するだけではダメ?」「検索要件はどこまで必要?」といった実務上の疑問が増えています。2026年現在は、制度対応だけでなく、2027年以降を見据えた経理DXまで考えることが重要です。この記事では、2024年完全施行後の電子帳簿保存法の実務、電子取引データの具体的な保存フロー、検索要件やスキャナ保存、猶予措置、2027年の新制度を見据えた準備についてわかりやすく解説します。
電子帳簿保存法は2024年以降どう変わった?2026年の現在地を確認

電子帳簿保存法は、税務関係の帳簿・書類を電子データで保存するためのルールを定めた法律です。
現在の実務では、特に「電子取引」が重要です。
電子取引とは、メールでPDFの請求書を受け取る、ECサイトから領収書をダウンロードする、クラウドサービス上で請求書を授受するといった、取引情報を電子データでやり取りする取引を指します。
2024年1月1日以降に行う電子取引については、原則として、その電子取引データを電子データのまま保存する必要があります。
つまり、「PDFでもらった請求書を印刷してファイルに閉じておけば大丈夫」という従来型の処理だけでは、原則として対応できません。
一方で、電子帳簿保存法には「電子帳簿・電子書類」「スキャナ保存」「電子取引」という3つの制度があります。
| 区分 | 主な対象 | 2026年の実務ポイント |
|---|---|---|
| 電子帳簿等保存 | 会計ソフト等で作成した帳簿 | 電子データで保存する方法を選択可能 |
| スキャナ保存 | 紙の領収書・請求書等 | 要件を満たせば紙をスキャンして保存可能 |
| 電子取引 | PDF請求書・Web領収書等 | 電子データでの保存が原則必要 |
したがって、まず自社がどのデータを「どの制度」で保存しているのかを整理することが、2026年の実務対応の第一歩です。
2024年以降は電子取引データの保存が実務の中心です。まずは社内の「電子で受け取っている書類」を全件洗い出しましょう。
2024年完全施行後に特に重要な「電子取引データ保存」とは?

電子帳簿保存法対応で、企業が最も注意したいのが電子取引データです。
例えば、次のような取引が該当します。
- メール添付で届いた請求書PDF:メールで電子的に受け取った請求書
- メール本文に記載された請求情報:メール本文で授受した取引情報
- ECサイトからダウンロードした領収書:Web上で発行された領収書
- クラウド請求書サービスで受け取った請求書:クラウド上で授受する請求書
- Webサイトから発行された利用明細:電子的に発行された利用明細
- 電子契約サービスで締結した契約書:電子的に締結・授受した契約書
- 電子請求書システムを通じて受け取った請求書:システム経由で授受した請求書
重要なのは、「電子で受け取ったものを紙に変換しただけでは、電子取引データの保存義務を満たしたことにはならない」という点です。
2024年1月以降の電子取引データについては、原則として電子データを保存したうえで、必要なときに内容を確認できる状態にしておく必要があります。
「紙でもらった書類」と「PDFでもらった書類」は処理が違う
ここは経理担当者が特に間違いやすいポイントです。
紙の請求書を受け取る
- 紙のまま保存する方法がある
- 要件を満たしてスキャナ保存する方法もある
一方、PDFの請求書をメールで受け取る場合は、電子取引データとして保存します。
「最終的に紙で保管しているか」ではなく、取引時点でどのような方法で書類を授受したかを確認することが重要です。
電子帳簿保存法の実務フロー|受領から保存まで5ステップ

電子帳簿保存法への対応は、専用システムを導入するだけでは完了しません。
実務では、次の5ステップに分けて考えると整理しやすくなります。
STEP1:電子取引データを洗い出す
まず、社内で電子的に受け取っている書類を一覧化します。
- 請求書:電子的に受け取っている請求書
- 領収書:ECサイトなどから取得する領収書
- 見積書:電子的に授受する見積書
- 注文書:電子的に授受する注文書
- 契約書:電子契約サービス等で締結する契約書
- 納品書:電子的に授受する納品書
- 利用明細:Webサイト等から取得する利用明細
部署ごとに保存方法が違う場合もあるため、経理部だけでなく、営業・購買・総務なども確認します。
STEP2:受領方法を分類する
次に、書類を、紙/メール/Webサイト/クラウドサービス/電子契約などに分類します。
ここで「電子取引」に該当するものを把握します。
STEP3:保存場所を統一する
電子データを個人のパソコンやメールボックスだけに残す運用は、検索性や退職時の引継ぎを考えると不安が残ります。
そのため、「誰が受け取っても、最終的にどこへ保存するのか」という社内ルールを決めます。
STEP4:検索・表示できる状態を確認する
電子取引データは、税務調査などの際に必要なデータを速やかに確認できるようにしておく必要があります。
原則として「日付・金額・取引先」で検索できる状態を整えます。
一定の条件に該当する場合には、検索要件についての扱いが異なるため、自社の売上規模や保存方法も確認しましょう。
STEP5:定期的に運用をチェックする
制度対応で最も危険なのが、「ルールは作ったが、実際には守られていない」状態です。
例えば月1回、次のような項目を確認すると、運用ミスを早期に発見できます。
- 保存場所:電子取引データが所定のフォルダに保存されているか
- ファイル名・保存方法:社内ルールに沿って統一されているか
- 個人PCへの保存:担当者が個人PCだけに保存していないか
実務フロー図
- 取引発生
- 書類を受領
- 「紙?電子?」を確認
- 電子の場合は電子取引データとして保存
- 保存場所・ファイル名を統一
- 日付・金額・取引先等から検索可能にする
- 会計処理・証憑確認
- 決算・税務調査時に速やかに提示
このフローを社内マニュアルにしておくと、担当者が変わっても運用を維持しやすくなります。
法令対応では、システム選びより先に保存対象・担当者・保存場所・検索方法を決めることが、運用ミスを防ぐポイントです。
2026年の電子帳簿保存法対応で確認したい検索要件

電子取引データを保存するときに、経理担当者が悩みやすいのが「検索できる状態」の作り方です。
基本的には、①取引年月日、②取引金額、③取引先を検索項目として管理することがポイントです。
例えば、請求書PDFを、「2026年09月_株式会社〇〇_330000円_請求書.pdf」のように整理する方法があります。
ただし、ファイル名だけに依存するのではなく、実際に必要なデータを速やかに探せる仕組みになっているかを確認することが重要です。
また、検索要件には一定の例外・緩和があります。国税庁のチェックシートでは、基準期間の売上高が5,000万円以下の場合などについて、一定の条件のもとで検索要件に関する扱いが示されています。
そのため、「検索要件があるから高額なシステムを必ず導入しなければならない」とは限りません。
自社の規模・取引件数・保存方法に応じて、クラウドサービス、ファイルサーバー、会計システムなどを組み合わせて設計することが重要です。
「システムを導入すれば終わり」ではない|2026年は運用設計が重要

電子帳簿保存法への対応でありがちな失敗が、システム導入だけで満足してしまうケースです。
例えば、電子帳簿保存法対応をうたうクラウドサービスを導入しても、次のような事項が決まっていなければ、実務は安定しません。
- 担当者:誰がデータを登録するのか
- 保存対象:どの書類を保存するのか
- 保存期限:保存期限をどう管理するのか
- 紙書類:紙の書類をどう扱うのか
- 訂正・削除:修正・削除が発生した場合どうするのか
- 引継ぎ:退職者のデータをどう引き継ぐのか
国税庁は、電子取引データの訂正・削除防止に関する事務処理規程のサンプルも公開しています。
そのため、2026年の実務では、「法律に合わせてシステムを入れる」だけでなく、「自社の経理フローに合わせて保存ルールを設計する」ことが重要です。
特にチェックしたい5項目
| チェック項目 | 確認する内容 |
|---|---|
| 受領 | 電子取引を把握できているか |
| 保存 | 保存場所が統一されているか |
| 検索 | 日付・金額・取引先から探せるか |
| 改ざん防止 | 訂正・削除を防止する仕組みがあるか |
| 教育 | 全社員がルールを理解しているか |
(参考)国税庁「電子帳簿保存法関係の参考資料・規程サンプル」
2027年1月からの制度も見据えて2026年に準備する

2026年に電子帳簿保存法を見直すなら、もう一つ押さえておきたいのが2027年1月1日以後の制度です。
令和7年度税制改正では、請求書等のデジタルデータを保存し、帳簿へ自動連携する仕組みに対応した新しい制度が設けられました。国税庁によれば、一定の要件を満たす仕組みを利用する場合には、事前の届出が必要です。
つまり、2026年は単純に「現在の保存ルールを守る」だけでなく、電子請求書 → 保存 → 会計処理 → 帳簿という一連の流れをどこまで自動化できるかを検討するタイミングでもあります。
特に、次のような企業は、電子帳簿保存法対応を経理DXのきっかけとして活用できます。
- 請求書の件数が多い:証憑処理の負担が大きい企業
- 経理担当者の入力作業が多い:手入力による業務負担が大きい企業
- クラウド会計を利用している:電子データと会計処理の連携を進めやすい企業
- 証憑の確認に時間がかかる:請求書等の検索・確認業務を効率化したい企業
2026年は、電子保存を「義務への対応」で終わらせず、請求書から仕訳までの自動化を検討する好機です。
(参考)国税庁「請求書等を帳簿に自動連携する仕組みに対応した制度が新設されました」
よくある質問

Q. PDFの請求書を印刷して紙で保存すれば問題ありませんか?
A. 原則として、電子取引で受け取った請求書等については、電子データ自体を保存する必要があります。紙に印刷しただけで電子取引データの保存に代えるという考え方ではなく、電子データを保存したうえで、必要な要件を満たすことが基本です。
Q. メールで届いた請求書も対象ですか?
A. はい。メールにPDFの請求書が添付されている場合などは、電子取引に該当する可能性があります。メール本文に取引情報が記載されているケースなども含め、自社の取引形態を確認しましょう。
Q. 紙の領収書をスキャンしたら原本を捨ててもいいですか?
A. スキャナ保存の要件を満たして保存している場合には、紙の書類を廃棄できるケースがあります。ただし、「スキャンした」というだけで無条件に廃棄できるわけではありません。自社の保存方法がスキャナ保存の要件を満たしているかを確認することが重要です。
Q. 専用の電子帳簿保存法対応システムは必須ですか?
A. 必ずしもそうではありません。保存方法や企業規模、取引件数によって適切な方法は変わります。ただし、検索性や改ざん防止、データ管理を人手だけで行う場合は、運用負担が大きくなる可能性があります。
Q. 「相当の理由」があれば保存できなくても大丈夫ですか?
A. 電子取引データについては、一定の要件を満たす場合の猶予措置があります。ただし、単に「対応が面倒だから」という理由で利用できるものではありません。一定の「相当の理由」があることなど、猶予措置の適用条件を確認する必要があります。
まとめ

2026年の電子帳簿保存法対応では、2024年以降の電子取引データ保存を正しく運用できているかを点検し、さらに将来の経理DXまで見据えて仕組みを整えることが重要です。
- 電子取引データを把握する:メールやWeb、クラウドなどで受け取った書類を洗い出し、電子取引として適切に保存します。
- 保存・検索ルールを整える:保存場所を統一し、日付・金額・取引先などから必要なデータを探せる状態を整えます。
- 2027年以降を見据える:電子請求書から会計処理までの自動連携を検討し、法令対応と経理効率化を同じフローに組み込みます。
電子帳簿保存法を単なる法令対応で終わらせず、自社の経理業務を見直すきっかけとして活用することが、2026年以降の実務では重要です。
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