経費を支払ったのに領収書を紛失した、そもそも領収書が発行されなかったというケースは珍しくありません。領収書がないからといって直ちに経費にできないわけではありませんが、取引の事実や事業との関連性を説明できる証拠を残すことが重要です。この記事では、領収書がない経費の処理方法や出金伝票・カード明細の活用方法、保存時の注意点を解説します。
領収書がない経費でも計上できる?3つの判断ポイント
領収書がない経費でも、支出の事実と事業との関連性を客観的に説明できる場合は、経費として処理できる可能性があります。
特に重要なのは、「①何に使ったお金なのか」「②いつ・誰に支払ったのか」「③いくら支払ったのか」の3点です。領収書がなくても、これらを確認できる資料を組み合わせて残しておくことが大切です。
たとえば、取引先との打ち合わせに5,000円を支払ったものの領収書を紛失した場合、クレジットカード明細や銀行の出金履歴、予定表、メールなどから取引内容を説明できれば、証拠資料として活用できます。
ただし、「領収書がない=出金伝票を書けば必ず経費になる」というわけではありません。出金伝票はあくまで社内で取引内容を記録するための書類であり、実際の支出を裏付ける資料と併せて保存することが重要です。
領収書がないときに確認したい5項目
次の項目をできるだけ記録しておきましょう。
- 支払日:いつ支払ったのかを記録します。
- 支払先:誰に支払ったのかを確認できるようにします。
- 支払金額:実際に支払った金額を記録します。
- 支払内容:何のための支出なのか具体的に記録します。
- 事業との関連性:事業に必要な支出であることを説明できるようにします。
消費税の仕入税額控除を受ける場合は、所得税・法人税の経費処理とは別に、帳簿や請求書等の保存要件を確認する必要があります。国税庁は、原則として一定事項を記載した帳簿と請求書等の保存を求めています。
(参考)仕入税額控除をするための帳簿及び請求書等の保存|国税庁

領収書がない場合は、支出の事実だけでなく事業との関連性まで説明できる資料を残すことが重要です。
領収書がない経費を処理する4つの方法
領収書が手元にない場合でも、取引に応じて代替となる資料を確認できます。代表的なのが、出金伝票・クレジットカード明細・銀行明細・取引先からの請求書や利用明細です。
たとえば、現金で3,000円を支払ったものの領収書を紛失した場合は、出金伝票を作成し、支払先・日付・内容・金額などを記録します。
一方、クレジットカードで支払った経費であれば、カード利用明細だけで処理を終わらせるのではなく、購入内容を確認できる資料がないか探しましょう。
| 状況 | 確認・保存したい資料 |
|---|---|
| 現金払い | 出金伝票、購入記録など |
| クレジットカード払い | カード明細、利用先の明細など |
| 銀行振込 | 振込明細、請求書など |
| ネット購入 | 注文履歴、購入明細、電子領収書など |
なお、消費税の仕入税額控除については、帳簿のみの保存が認められる取引が限定されています。原則として「経費として認められるか」と「消費税の仕入税額控除ができるか」は分けて考える必要があります。
出金伝票に記載する6つの情報
出金伝票を作成する場合は、少なくとも次の情報を残しておくと、後から取引内容を確認しやすくなります。
- 支払日
- 支払先
- 支払金額
- 勘定科目
- 支払内容
- 領収書がない理由
特に「領収書紛失」とだけ記録するのではなく、「取引先との打ち合わせ時の飲食代」など、具体的な内容を残すことが重要です。
(参考)仕入税額控除のために保存する帳簿および請求書等の記載事項|国税庁

クレジットカード明細だけで経費処理できる?月1回の確認が重要
クレジットカードで経費を支払った場合、カード会社から発行される利用明細は重要な証拠資料になります。
ただし、カード明細だけでは購入した商品やサービスの具体的な内容まで分からないケースがあります。たとえば「〇〇株式会社 11,000円」と記載されていても、その11,000円が何の費用なのか分からなければ、事業関連性を説明しにくくなります。
そのため、利用明細に加えて、注文履歴・請求書・購入画面・メールなどを残しておくと安心です。
国税庁も、クレジットカードの利用明細データを電子的に受領した場合には、電子取引の取引情報として保存が必要になる場合があることを示しています。また、個々の取引について電子的に請求書・領収書等を受け取っている場合は、それらも別途保存が必要となる場合があります。
カード明細は「毎月1回」まとめて確認する
カード明細は月1回以上の頻度で確認し、各取引について「何の支出か」を判別できる状態にしておくと、決算時の確認作業を減らせます。
特に100件以上のカード利用がある会社では、決算直前にまとめて確認すると資料不足が発生しやすいため、月次で証憑を整理する運用がおすすめです。
カード明細は重要な証拠ですが、取引内容まで分からない場合は注文履歴や請求明細も併せて保存しましょう。
電子領収書がない場合は?注文履歴など3種類のデータを保存
Amazonなどのネット通販やクラウドサービスでは、紙の領収書ではなく、PDFやWeb画面上の購入明細などが発行されることがあります。
この場合、「紙の領収書がないから経費にできない」と考える必要はありません。まずは、電子的に受け取った取引情報を適切に保存することが重要です。
たとえばネット購入で領収書が取得できない場合でも、次のような資料を確認できます。
- 注文履歴:ネット通販などの購入履歴を確認できる資料です。
- 購入明細・請求明細:購入した商品やサービス、金額などを確認できる資料です。
- メールなどの取引情報:電子的に受け取った請求書や領収書などの情報です。
国税庁は、メールで受け取った請求書・領収書のPDFや、Webサイトからダウンロードしたデータ、クラウドサービスで受け取った電子請求書などを電子取引の対象として挙げています。電子取引については、データを保存する必要があります。
電子データは「紙に印刷すれば十分」とは限らない

2024年1月1日以後の電子取引では、一定の要件のもとで電子取引データを保存する必要があります。
保存するデータについては、日付・金額・取引先から検索できることなどが求められるため、ファイル名や保存場所をあらかじめ統一しておくと管理しやすくなります。
電子取引は紙に印刷して終わりではありません。受け取った電子データ自体を適切に保存する運用が必要です。
領収書がない経費で注意したい「5つ」の税務リスク
領収書がない経費を処理する際は、単に仕訳を入力するだけではなく、後から取引内容を説明できる状態にしておくことが重要です。
特に注意したいのが次の5点です。
- 私的な支出を経費にしていないか:事業とは関係のない支出を経費に含めないよう確認します。
- 支払先・金額・日付を確認できるか:取引の基本情報を後から確認できる状態にします。
- 事業との関連性を説明できるか:何のための支出なのか具体的に記録します。
- 消費税の仕入税額控除の要件を満たしているか:経費処理とは別に保存要件を確認します。
- 電子取引データを適切に保存しているか:電子的に受け取った取引情報を適切に保存します。
たとえば、事業用の支出であっても、個人的な利用が混在している場合には、事業で使用した部分を合理的に区分する必要があります。
また、消費税の仕入税額控除では、原則として帳簿と請求書等の保存が必要です。2026年現在、インボイス制度のもとで課税事業者が仕入税額控除を適用する場合は、取引ごとの保存要件を確認することが欠かせません。
証拠書類は7年間を意識して管理する
消費税の仕入税額控除に関係する帳簿・請求書等について、原則として7年間の保存が必要です。6年目・7年目については、帳簿または請求書等のいずれか一方を保存すればよいとされています。
そのため、領収書を紛失したからといって、その場で処理を終えるのではなく、代替資料を含めて後から確認できる状態で保管しておくことが重要です。

領収書の整理を記帳代行に任せるときの3つのポイント
領収書の紛失や証拠書類の不足が頻繁に発生する場合は、記帳代行の利用を検討する方法もあります。
記帳代行とは、領収書・請求書・通帳データなどをもとに、会計ソフトへの仕訳入力や帳簿作成を外部へ依頼するサービスです。
ただし、記帳代行を利用すれば領収書が不要になるわけではありません。依頼前に「どの資料を毎月提出するのか」「領収書がない場合は何を代替資料として用意するのか」を決めておくことが重要です。
たとえば、毎月100件の経費処理がある会社なら、次のようなルールを決めておくと運用しやすくなります。
- 領収書・請求書を月末までに整理する
- 領収書がない支出は出金伝票や明細を添付する
- 電子取引データは指定フォルダへ保存する
実際に記帳代行では、領収書・請求書・通帳データをもとに仕訳入力や帳簿作成を行うサービスがあります。
記帳代行に渡す資料のルールを統一する
記帳代行を効率的に活用するには、「資料を渡すだけ」ではなく、社内で証憑管理のルールを統一することが大切です。
領収書がない場合に「出金伝票+カード明細」「注文履歴+カード明細」のように代替資料の組み合わせを決めておけば、毎月の確認作業を標準化できます。
(参考)仕入税額控除をするための帳簿及び請求書等の保存|国税庁
よくある質問
Q. 領収書がなくても経費にできますか?
A. 領収書がなくても、支出の事実と事業との関連性を客観的に説明できる資料があれば、経費として処理できる可能性があります。ただし、消費税の仕入税額控除については別途保存要件を確認する必要があります。
Q. 出金伝票を書けば領収書の代わりになりますか?
A. 出金伝票だけで必ず経費として認められるわけではありません。支払日・支払先・金額・内容・領収書がない理由などを記録したうえで、カード明細や銀行明細、購入記録などの証拠資料も併せて保存することが重要です。
Q. クレジットカードの利用明細だけで経費処理できますか?
A. カード利用明細は重要な証拠資料ですが、明細だけでは購入内容が分からない場合があります。注文履歴・請求書・購入画面・メールなど、取引内容を確認できる資料も併せて保存しましょう。
Q. 電子領収書を紙に印刷して保存すれば大丈夫ですか?
A. 電子取引については、一定の要件のもとで電子取引データ自体を保存する必要があります。紙に印刷するだけで十分とは限らないため、受け取った電子データを適切に保存しましょう。
Q. 領収書などの証拠書類は何年間保存すればよいですか?
A. 消費税の仕入税額控除に関係する帳簿・請求書等については、原則として7年間の保存が必要です。取引の種類や税務上の扱いによって要件が異なる場合があるため、具体的な保存期間を確認しましょう。
まとめ
領収書がない経費でも、支出の事実と事業との関連性を説明できる資料を適切に残すことで、経費として処理できる可能性があります。
- 代替資料を残す:出金伝票だけでなく、カード明細・銀行明細・注文履歴などを組み合わせて保存しましょう。
- 電子取引データを保存する:電子的に受け取った請求書や領収書などは、電子データ自体を適切に保存しましょう。
- 月次で証憑を整理する:カード明細などを定期的に確認し、後から取引内容を説明できる状態にしておきましょう。
領収書の紛失や証拠書類の不足を防ぐには、日頃から資料の保存ルールを決めておくことが大切です。

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